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緑化現場からの報告・3・

郷土種を呼ぶ下地づくり−静岡県 中林建設−

◆◆静岡県SF緑化工法協会で、郷土の自然復元に取り組んでいる協会員をご紹介します。◆◆

中林建設(株)の主任研究員 山本一美さんです。山本さんは、平成4年から緑化を始められ、以来SF緑化システムの普及・施工を熱心に進められています。

今回は、静岡県沼津土木事務所発注の沼津土肥線・戸田村井田の法面緑化工事を中心にご報告します。
この緑化工事については、平成10年度土木工事技術発表会で山本さんが発表され、表彰されています。

 

施工は平成8年4月から平成9年12月まで、4箇所で行われました。施工前の写真です。

A:平成8年12月施工(西向き・3008m2)、B:同年4〜5月施工(南西向き・1482m2)、C:同年11月施工(南西向き・1864m2)。
D(Cの左側、この角度からは見えません):平成9年12月施工(北西向き・2750m2)。

5年経過した現在。周囲の山に同化しつつあるのが、写真からもおわかりいただけるのではないでしょうか。

※Dの左側の法面は他工法です。

◇データ◇
勾配1:1.0の切土、硬度25mm以上の土砂、転石や岩盤あり
接着繊維工〈TG緑化工法〉
平均吹付厚:5cm(土砂)、7cm(岩盤)
緑化基礎工:ピン止め工(土砂)、ラス金網張り工(岩盤)
導入種:
ウバメガシ、シラカシ、スダジイ、ヤシャブシ、ヤマハンノキ、ヤマハギ、コマツナギ、メドハギ、ススキ、ヨモギ

本工事は、国立公園区域内であり、駿河湾を一望でき、富士山を仰ぎ見る風向明媚な場所での工事であることから、道路改良工事によって切り取られた法面を早期に樹林化することを目標としました。

現地の生態系を考慮し、周辺に自生する樹種を採取して播種すること、また木本類が生育しやすい種子配合とすることが、沼津土木事務所と打ち合わせで決まりました。
自生種のうち、沼津土肥線沿線に多く自生し、比較的種子の採取が容易なことから、ウバメガシ、シラカシ、スダジイが選定されました。

ウバメガシ・シラカシ・スダジイの種子は、いわゆるドングリです。10月下旬から11月にかけて落下するのを待って、社員や地元の方に依頼して拾い集めました。その中から、虫食いのものを除いて、水洗いし、陰干しをして保存しました。30から50kgものドングリを集めるのは、骨の折れる作業だったそうです。
しかし、その甲斐あって、ドングリは芽を出し、先駆樹の陰でゆっくりと、しかし着実に育っています。

それぞれの法面について、写真と山本さんの観察記録の一部を紹介しながら、経過を追ってみることにします。

・・・・・・・法面A 「ヤシャブシと郷土種のジャングル」・・・・・・・

施工前。平成8年12月TG緑化工法施工。翌春、導入種が発芽。 1年後。導入種は全種発芽。ハギ類が茂り過ぎて、ウバメガシ・シラカシ・スダジイの生育を被圧しているように思われる。
2年半後。ハギ類が密生して、成長の遅いウバメガシ・シラカシ・スダジイが被圧されている。ニシキウツギ、アカメガシワ、カラスザンショウなどの侵入種も確認。 平成13年10月5日現在。ヤシャブシが6〜7mに成長して優占種に。林の中に入ってみると、2〜3mのスダジイやウバメガシ、侵入種のアカメガシワ・カラスザンショウ・ヤブニッケイ・クサギなども大きく成長していた。5年目にして、まさにジャングル。

 

・・・・・・・法面B 「メヒシバに守られて」・・・・・・・

施工前。平成12年5月TG緑化工法施工。2週間目から木本類が発芽。 7ヶ月後。侵入種のメヒシバに覆われる。
1年後。導入種は全種確認。ハギ類が群生しているが、日当たりのよい箇所では、ウバメガシ・シラカシ・スダジイの生育も良好。新入種もみられる。
メヒシバに覆われて、一時はどうなることかと心配されたが、かえってメヒシバのおかげで潮風や乾燥の害から守られた感じである。
5年目、平成10年5月現在。2年目からヤシャブシ・ヤマハンノキの成長が著しく、鬱蒼とした斜面になった。

 

・・・・・・・法面C 「西日と強い西風の当たる斜面」・・・・・・・

施工前。平成8年12月TG緑化工法施工。翌春、導入種が発芽。 6ヶ月後。西風を強く受けるようで、法面の乾燥が著しい。木本類の枯死も見られる。
1年後。導入種は全種確認。枯死が見られた部分も、少しずつ草本・木本類で覆われてきた。 2年目。法面全体がハギ類で覆われてきた。ウバメガシ・シラカシ・スダジイに日がよく当たるため、木に力があるように思われる。
3年目。 4年目。
5年目。今夏の乾燥でヤシャブシなどが少し枯れたが、生き残った木は生育良好。新入種も多くみられる。ススキが秋の風情を醸し出す。 落石防止ネット越しに見ると、スダジイ、ウバメガシ、シラカシ、ヤブニッケイ、ウツギ、ノイバラなど様々な種が育っていた。

 

・・・・・・・法面D 「岩盤でも、もちろん樹林化」・・・・・・・

施工前。植物の生育を考慮して、ラス金網は最小限にし、岩盤部分のみに張る。
平成9年12月TG緑化工法施工。翌春、導入種が発芽。ハギ類の発芽がやや少ないようだ。
4年目。ウバメガシ・シラカシ・スダジイなど導入種が順調に生育、ニシキウツギ・カラスザンショウ・アカメガシワなどの新入種もみられる。

 

・・・・・・・おまけ、西天城高原線・・・・・・・

戸田から修善寺方面へ向かう西天城高原線。標高900m。周辺に自生する樹種を調査し、ニシキウツギ、ドウダンツツジ、アセビ、アキグミなど11種の種子配合、TG緑化工法で施工。
ドウダンツツジは発芽したものの成長せず、アセビは発芽も確認できず。
5年目を迎えた現在、アキグミとニシキウツギが優占する群落となっている。
沿線には、他工法による草生法面があるが、植生の遷移はみられず、年々衰退しているようだ。

 

ここでご紹介した法面は、生態系を考慮し、郷土種を積極的に導入しようとする緑化でしたが、それについて山本さんのご意見を伺いました。

「5年経過してみると、あんなに沢山の樹種を播種する必要はなかったかと思いますし、周辺に自生する樹種も無理に入れる必要はないでしょう。周囲から侵入してくるからです。」

「“地採り”の種子は、収穫時期が限られるし、使用期限もあるので、手間がかかり大変です。西天城の事例では、アセビが失敗しました。埃のように小さいタネですから、ものすごく大量に入れる必要があったのではないかと思います。」

「郷土種を入れることよりも、郷土種を呼ぶ下地づくりをすることのほうが大事なのではないでしょうか。
基盤づくり、それで十分自然復元はできると思います。」

「究極は無種子なのかもしれませんが、まだわかりません。これまでの経験から、ハギを少し導入するのがよいと思います。ハギの群生については批判もあるようですが、戸田の事例では、遷移が進んでハギの群生は消えてしまいました。
また、特に秋や冬に施工する場合、冬季の数ヶ月間は木本が発芽しません。そういう場合は、イタリアンライグラスを入れるのがいいです。初期緑量という利点に加え、風や乾燥の厳しい時期に基盤を覆うことで、種子の冬越しを助ける効果があると考えるからです。」

「侵入種のメヒシバに覆われた所が、かえって導入種の生育が良かったという経験から、次の現場ではメヒシバを播種してみました。しかし、出ませんでした。こういうところが自然。自然は本当によくできているものだと感じます。
埋土種子や現地表土の利用がもっと進められれば、より自然な緑化ができるようになると思います。」

この緑化工事が行われていた当時、理論や書類上重要であるという点から、微妙な種子配合の計算にとらわれすぎていました。また、施工当年の野草の繁茂についても、過剰な対応であったことが思い起こされます。
最近では、周辺植物や土壌動物・微生物の侵入促進のため、周辺表土の混入を要求される現場が増えています。現在、表土培養工〈ER緑化工法〉のほか、ソイルシーダー半タンク当たり20リットル程度を混入する方法、または施工直後に法肩などから散布する方法で、周辺表土の利用を図っています。今後は、さらに使用する自然土の範囲を拡大していく方向で開発を進めています。
施工当年の野草の繁茂は、自然なこととして受け止めていく必要があると考えます。

「基本は木本播種です。他工法で草本主体の緑化をよく見かけますが、遷移するどころか、年々衰退しています。木本導入すればよかったのにと思い、もったいない気がします。しかし、5年、10年先を見ないとまだわかりません。戸田の法面も今はヤシャブシやヤマハンノキの林ですが、下層で育っているカシがそれに取って代わるのかどうか。推移を見守りたいと思います。」

5年後、10年後にウバメガシの林になっているかどうか、それとも・・・。
「緑化は楽しみな仕事ですよ」という山本さんの言葉が印象的でした。

ここに掲載した写真の大部分と資料等は山本さんが提供してくださったものです。ありがとうございました。

なお、この現場は、土と緑の研究所へお越しくださった方への施工現地見学コースとしています。これまでに、協会員をはじめ、発注者や学会関係者、また海外から視察に来られた方にもご紹介しました。数年を経た樹林化の現場は、研究所の見本園とは違った迫力があり、見学された方々に深い感銘を与えているようです。皆様もぜひ一度お出かけください。

(文責:全国SF緑化工法協会・田口 睦)

◆◆今後も各地の緑化現場から、SF緑化工法協会員の活動をお知らせしていきます。◆◆


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