福島県・国道13号−モルタル法面が緑の斜面に−

◆福島県SF緑化工法協会の会員(株)エヌティーエスによる既設モルタル法面の緑化をご紹介します。◆

緑あふれる山間の道路を走っていると、あちこちにモルタル吹付された法面を目にします。景観にそぐわないばかりか、数十年を経て劣化が進んだものも少なくありません。
そんなモルタル法面を緑化したいという熱意から、TG緑化工法による既設モルタル吹付法面の緑化に取組み、見事に成功された(株)エヌティーエス会長の佐藤喜一郎氏にお話を伺いました。
全国SF緑化工法協会の西澤睦博の取材によりご報告します。

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工事名:栗子国道管内防災工事
発注者:国土交通省栗子国道維持出張所
施工日:平成12年11月〜12月(第1工区)、平成13年5月〜8月(第2工区)
法面:勾配1:1.0〜1.2(第1工区)、1:0.5〜1.0(第2工区)、南から南南西向き、地山は凝灰岩質泥岩
施工面積:第1工区950u、第2工区2770u
緑化工:接着繊維工〈TG緑化工法〉、平均吹付厚5cm
緑化基礎工:ラス金網張り工

導入種:(木本)ヤマハギ、イタチハギ、
(草本)メドハギ、トールフェスク、オーチャードグラス、クリーピングレッドフェスク

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現場は、福島から山形へ抜ける国道13号線で、所々にモルタル吹付けされた法面がある。その多くは、数十年が経過して劣化が進んでいる。
モルタルが深部まで劣化してしまった場合は、取り除いて新規に法面工事をしなければならないが、表面だけが劣化している場合、モルタル面の上を緑化して保護すれば、モルタルの寿命を延ばすことができる、というのが佐藤会長の発想。また、この緑化が成功すれば、新しい公共事業となるかもしれないとの思いもあった。

◇データ◇ 工事名:栗子国道管内防災工事
発注者:国土交通省栗子国道維持出張所
施工日:平成12年11月〜12月(第1工区)、平成13年5月〜8月(第2工区)
法面:勾配1:1.0〜1.2(第1工区)、1:0.5〜1.0(第2工区)、南から南南西向き、地山は凝灰岩質泥岩
施工面積:第1工区950u、第2工区2770u
緑化工:接着繊維工〈TG緑化工法〉、平均吹付厚5cm
緑化基礎工:ラス金網張り工

導入種:(木本)ヤマハギ、イタチハギ、
(草本)メドハギ、トールフェスク、オーチャードグラス、クリーピングレッドフェスク

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現在、モルタル法面であったことは想像できません。自然な景観の斜面へと推移していることに、施工者である佐藤会長自身も驚いているそうです。今後は施工地の追跡調査を続けるとともに、福島県SF緑化工法協会(現在の会長は佐藤喜一郎氏)の新機軸として、モルタル緑化の普及に力を入れたいということです。

そこで、この現場の実績から、この工法の利点をあげていただきました。

他社が提案していた他工法のほぼ半額で施工できた。
モルタルの削孔の費用は1箇所につき600円程度でできた。削岩機を工夫することにより、効率よく削孔でき、掘削屑が粉状になり、後処理が不要になったため、交通に支障をきたすことなく安全に施工できた。
寒冷地においても基盤の流失がなく、8分勾配まではTG緑化工法の吹付厚さ5cm相当で十分対応できる。
施工後1年目は斑状の草本主体の群落となるが、2年目以降は木本群落により自然な景観となったので、まったく心配はない。
モルタルに開けた穴に基盤材を打ち込むように吹付けるとよい。穴から地山へ根が伸長していく。
表面が劣化したモルタル法面を緑化により補強できる。
かつて法面保護といえばモルタル吹付、という時代がありました。その頃に施工されたモルタル法面は、たとえ古びて味が出たとしても、自然の景観に溶け込むものではありません。そのような法面は日本中いたるところにあります。また、モルタル法面は人工的な構造物である以上、劣化は免れません。メンテナンスが必要です。

「生きた補強土工」である樹木を利用して、モルタル法面をメンテナンスするという方法。低コストであり、より自然な法面づくりに貢献できる、いまの時代に適応した工法ではないでしょうか。

ここでご紹介した事例を参考に、ぜひTG工法を応用したモルタル緑化に挑戦してみていただけたらと思います。

◆◆今後も各地の緑化現場から、SF緑化工法協会員の活動をお知らせしていきます。◆◆


写真1

モルタルから緑に変わった法面を背に立つ佐藤会長。「初めは、周囲からうまく行かないだろうという声も聞こえ、失敗したら・・・と非常に心配しました。」
法面の右半分は、佐藤会長自らが吹付け施工されたそうです。苦労したことは、法面に上がること。
道路際から20mは3分勾配のコンクリート擁壁で、法面の一番高い所は50mの高さがあります。

この成功を機に、福島県内で7箇所の既設モルタル法面の緑化を手がけられました。
発注者からの評判もよく、すべてうまく行っているそうです。


写真2

第1工区(法面勾配1:1.0〜1.2、面積950m2)

法面の下半分20mはコンクリート擁壁で、
上半分がモルタル


写真3

第2工区(法面勾配1:0.5〜1.0、面積2770m2)

法面の高さは最高部で50m


写真4

平成12年11月から第1工区、平成13年5月から第2工区の施工が行われた。
当初は100m2程の試験施工から始めるつもりが、いきなり950m2の大仕事となった。交通量の多い国道でもあり、失敗したら・・・という不安があった。同業他社からは「失敗するだろう」と思われていた。


植物の生育を考慮し、モルタル法面に地山に連結する穴を開けることとした。
厚さ10cmのモルタルに、100mmの穴を1m2当たり4箇所の割合で開けた。
まずハンマードリルで下穴を開け、つぎに削岩機で掘削した。普通はトンネル掘削で使用する親子ビットを採用したことにより、円形の穴を効率よく開けることができた。また、掘削屑が粉状となり、交通量の多い国道法面でも安全に工事ができた。


写真4

緑化基礎工としてラス金網張り工を施工した。


写真5

TG緑化工法の吹付施工が行われた。
吹付厚さ5cm相当。
通常ノズルではなく、エアーノズルを用いて、法面にぶら下がっての施工となった。
穴の部分には、基材を中へ打ち込むように吹付けた。

第1工区は、平成12年12月の冬施工。
第2工区は、平成13年8月の夏施工であった。


写真6

● 施工後の追跡調査 ●
右-第1工区(施工後9ヶ月)
ハギ類が40〜70cmに成長

左-第2工区(施工後4ヶ月)

ヤマハギや草本類が5〜10cmに成長

モルタルに穴を開けた箇所から、まず草が生え始めた。まるで田植えをしたかのように、点々と。
それから次第に草が広がり、その間にハギ類が生育していた。

台風で大雨が降ったとき、斜面に勢いよく水が流れたが、基盤の流失はなかった。
吹付時に、基材を完全に団粒反応させることが、侵食に強い基盤づくりには不可欠である。


写真7

写真は、平成15年8月現在の様子。
左の第2工区は施工から2年、右の第1工区は2年半が経過している。


写真8

第2工区

緑化工施工の後に雪崩防止柵が設置された。
木本群落が成立すれば柵は必要ないのではと
の意見も。


写真9

第1工区
イタチハギ主体の群落となっている。
植物の掘り取り試験の結果、イタチハギの根が
モルタルに開けた穴から地山の方へ伸びている
ことが確認された。


写真10

<<その後の状況報告>>

平成21年7月 2工区 8年経過



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