◆◆静岡県SF緑化工法協会で、郷土の自然復元に取り組んでいる協会員をご紹介します。◆◆ 中林建設(株)の主任研究員 山本一美さんです。山本さんは、平成4年から緑化を始められ、以来SF緑化システムの普及・施工を熱心に進められています。 今回は、静岡県沼津土木事務所発注の沼津土肥線・戸田村井田の法面緑化工事を中心にご報告します。 この緑化工事については、平成10年度土木工事技術発表会で山本さんが発表され、表彰されています。 ◇データ◇ 勾配1:1.0の切土、硬度25mm以上の土砂、転石や岩盤あり 接着繊維工〈TG緑化工法〉 平均吹付厚:5cm(土砂)、7cm(岩盤) 緑化基礎工:ピン止め工(土砂)、ラス金網張り工(岩盤) 導入種: ウバメガシ、シラカシ、スダジイ、ヤシャブシ、ヤマハンノキ、ヤマハギ、コマツナギ、メドハギ、ススキ、ヨモギ 本工事は、国立公園区域内であり、駿河湾を一望でき、富士山を仰ぎ見る風向明媚な場所での工事であることから、道路改良工事によって切り取られた法面を早期に樹林化することを目標としました。 現地の生態系を考慮し、周辺に自生する樹種を採取して播種すること、また木本類が生育しやすい種子配合とすることが、沼津土木事務所と打ち合わせで決まりました。 自生種のうち、沼津土肥線沿線に多く自生し、比較的種子の採取が容易なことから、ウバメガシ、シラカシ、スダジイが選定されました。 ウバメガシ・シラカシ・スダジイの種子は、いわゆるドングリです。10月下旬から11月にかけて落下するのを待って、社員や地元の方に依頼して拾い集めました。その中から、虫食いのものを除いて、水洗いし、陰干しをして保存しました。30から50kgものドングリを集めるのは、骨の折れる作業だったそうです。 しかし、その甲斐あって、ドングリは芽を出し、先駆樹の陰でゆっくりと、しかし着実に育っています。 それぞれの法面について、写真と山本さんの観察記録の一部を紹介しながら、経過を追ってみることにします。 ここでご紹介した法面は、生態系を考慮し、郷土種を積極的に導入しようとする緑化でしたが、それについて山本さんのご意見を伺いました。 「5年経過してみると、あんなに沢山の樹種を播種する必要はなかったかと思いますし、周辺に自生する樹種も無理に入れる必要はないでしょう。周囲から侵入してくるからです。」 「“地採り”の種子は、収穫時期が限られるし、使用期限もあるので、手間がかかり大変です。西天城の事例では、アセビが失敗しました。埃のように小さいタネですから、ものすごく大量に入れる必要があったのではないかと思います。」 「郷土種を入れることよりも、郷土種を呼ぶ下地づくりをすることのほうが大事なのではないでしょうか。 基盤づくり、それで十分自然復元はできると思います。」 「究極は無種子なのかもしれませんが、まだわかりません。これまでの経験から、ハギを少し導入するのがよいと思います。ハギの群生については批判もあるようですが、戸田の事例では、遷移が進んでハギの群生は消えてしまいました。 また、特に秋や冬に施工する場合、冬季の数ヶ月間は木本が発芽しません。そういう場合は、イタリアンライグラスを入れるのがいいです。初期緑量という利点に加え、風や乾燥の厳しい時期に基盤を覆うことで、種子の冬越しを助ける効果があると考えるからです。」 「侵入種のメヒシバに覆われた所が、かえって導入種の生育が良かったという経験から、次の現場ではメヒシバを播種してみました。しかし、出ませんでした。こういうところが自然。自然は本当によくできているものだと感じます。 埋土種子や現地表土の利用がもっと進められれば、より自然な緑化ができるようになると思います。」 この緑化工事が行われていた当時、理論や書類上重要であるという点から、微妙な種子配合の計算にとらわれすぎていました。また、施工当年の野草の繁茂についても、過剰な対応であったことが思い起こされます。 最近では、周辺植物や土壌動物・微生物の侵入促進のため、周辺表土の混入を要求される現場が増えています。現在、表土培養工〈ER緑化工法〉のほか、ソイルシーダー半タンク当たり20リットル程度を混入する方法、または施工直後に法肩などから散布する方法で、周辺表土の利用を図っています。今後は、さらに使用する自然土の範囲を拡大していく方向で開発を進めています。 施工当年の野草の繁茂は、自然なこととして受け止めていく必要があると考えます。 「基本は木本播種です。他工法で草本主体の緑化をよく見かけますが、遷移するどころか、年々衰退しています。木本導入すればよかったのにと思い、もったいない気がします。しかし、5年、10年先を見ないとまだわかりません。戸田の法面も今はヤシャブシやヤマハンノキの林ですが、下層で育っているカシがそれに取って代わるのかどうか。推移を見守りたいと思います。」 5年後、10年後にウバメガシの林になっているかどうか、それとも・・・。 「緑化は楽しみな仕事ですよ」という山本さんの言葉が印象的でした。 ここに掲載した写真の大部分と資料等は山本さんが提供してくださったものです。ありがとうございました。 なお、この現場は、土と緑の研究所へお越しくださった方への施工現地見学コースとしています。これまでに、協会員をはじめ、発注者や学会関係者、また海外から視察に来られた方にもご紹介しました。数年を経た樹林化の現場は、研究所の見本園とは違った迫力があり、見学された方々に深い感銘を与えているようです。皆様もぜひ一度お出かけください。 (文責:全国SF緑化工法協会・田口睦) ◆◆今後も各地の緑化現場から、SF緑化工法協会員の活動をお知らせしていきます。◆◆ |
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